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vacation rental saraku
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「若い時から、こんなんいいなと思ってたの」
顔を見合わせて語り合うご夫婦。
大阪黒門名物のてっちりにひれ酒をいただきながら。
私は密かに思っている。
あぁ、私の理想の60才像はこのご夫婦だな、と。
築30年の鉄骨4階建てを一度スケルトンにして、フルリノベーションする計画。
もともとはビル丸ごと、オーナーである60代のご夫婦が長年お二人で住んでおられた。
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そろそろ老後のことを考えよう。
住みやすいマンションに住み替えるか、それとも今の建物にエレベーターをつけようか。
そんなところから、今回の計画は始まったという。
エレベーターを作って、フルリノベーションしたら、そこそこの費用必要になるし、それなら下の階はゲストハウスにしようか。
もういっそのこと、2人の荷物は最小限に断捨離して、住まいは4階部分だけにしよう。
屋上でビールを飲めたらそれで最高。
1階から3階は、国籍問わず、年齢問わず、いろんな人が集まってくる場所にできたらいいね。
そんな思いがけない流れで、今回のプロジェクトは進んでいったのだそう。
今でこそ京都大阪はインバウンド需要で民泊だらけだが、ここ5年くらいのこと。
でもご夫婦は何十年も前から、なんとなーくそんな暮らしを夢見てきたのだとか。
奥様が昔行ったアメリカで、家の一部に国籍問わず旅行者を招き入れ、交流するおばあちゃんを見て、「かっこいいなぁ」と憧れていたのだそうだ。
「日本にこんな時代がくるとは思ってなかった!」
「そういえば昔から憧れてたよね。」
ってご夫婦顔を見合わせてお話する姿、なんとも微笑ましくて。
きっとずっと、おふたり共通の青写真があったのだろう。
その話、今度は私が憧れてしまうやつ。
ご依頼いただいた時のヒアリングシートに、
「これから年を取っていくので、人とのつながりを大切にしていきたい」
そう書いておられた。
そんなご夫婦の人望あって、このプロジェクトにはいろんな方が関わっていた。
設計士さんに工務店、職人さん。
書家アーティスト、油絵の画家さん。
イラストレーターやグラフィックデザイナー、フォトグラファー。
そして、内装・外装のデザインする私。
(工事が終わっても娘のように可愛がってもらってる)
こんな家具作りましょうよ。
ここにこんなアートあったらいいよね。
こんなグッズ作ったらおもしろいんちゃいます?
そんな様子を少しご覧いただきたい。
フロアごとのテーマと色と愛称を
まず初めに各フロアごとにテーマカラーと愛称を決めた。
1階が論(語り合う場所:セミナールーム)
2階が膳(食を楽しむ場所:ゲストルーム)
3階が茶(お茶をする場所:ゲストルーム)
色と愛称をこんなところにしのばせておいた。
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この看板は、オーナー様の家紋がモチーフになっている。
モルタル調にエイジング塗装された看板を表のルーバーにはめこんで、照明を仕込んだので夜はお月様のようにほんわりと幻想的な光を放つ。
若草色の茶論
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外観は元々車庫のシャッターだったところがこんな風に生まれ変わった。
若草色のドアは既存建物の玄関だったもの。
一目見た時から印象的だったので、再利用しましょうよ、というところからカラーデザインが始まったのだ。
![](https://iroredesign.com/wp-content/uploads/2020/09/20200121-DSC_7847-1024x684.jpeg)
窓は季節の飾りを通りからも楽しんでもらえるように、ショーケースに。
ショーケースの中に入ってるファブリックパネルは、手ぬぐいや和紙を作った私のお手製。
若草色の扉を開けると、1階は教室になっている。
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壁に選んだのは、FARROW&BALLのベージュグレーのペンキ。
![](https://iroredesign.com/wp-content/uploads/2020/09/IMG_5437-1024x768.jpeg)
このタペストリーは、オーナー様がうん10年前に結婚のお祝いにいただいたものですって。
なんとご友人の手作り!素敵すぎる!
ナチュラルグレーのゲストルーム
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グレイッシュな木部に、黒いキッチンやインダストリアルな家具でピリリとアクセントを出している。
キッチンの前にはサブウェイタイル(名古屋モザイク)を上下で貼り分けた。
奥にあるのは半個室のベッド空間。 シナベニヤに囲まれた天井の低いこの空間は、想像以上に落ち着く。
私の爆睡実証済。
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カーテン、クッションはイギリスのファブリックVilla Novaでセレクト。
スモーキーなブラウン、グリーン、ブルー、グレー、自然を想像させる柄。
柄と色がバラバラでも、同シリーズで揃えてるのですごくこなれて見える。
Villa Novaのファブリックはどれも柔らかくなんとも言えないトーンの色つかいで、日本の住宅にも馴染みやすく個人的にすごくお気に入り。
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人肌くらいの明度のグレーと優しいトーンの家具がとても落ち着く空間。
コンパクトながらも、長時間籠りたくなる。
ごはんを食べながら親しい友人や家族と滞在するのにうってつけだ。
和モダンなお茶室にモリス
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こちらはまたガラリとイメージの違う和モダンな空間。
茶室設計専門の先生監修による、立礼卓のある客室だ。
この白い壁に私がセレクトさせていただいたのが、ウィリアムモリスのファブリックパネル。
柄のモスグリーンとマスタードイエローをつなげる形でクッションにも。
マスタードイエローが小上がりのクロスともつながり、和空間にモリス柄がモダン感を出すアクセントとなっている。
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色でつなぐ
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家具やインテリアにこだわりのある奥様は、アートやポスターを元々たくさんお持ちだった。
さらに、才能溢れるお友達が壁に書を描いてくださったり。
今回の私のミッションは、インテリアを飾り立てることではなく、全体のバランスを整えること。
アートやオーナー様のお気に入りのものをどこに飾っても映えるように、ベースとなる床壁天井の色は、引き算でつなげる。
内装が出来上がった瞬間、ちょっと物足りないんじゃない?ぐらいがちょうどいい。
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また、フロアごとにテイストが違っても、建物丸ごと、中も外も色でつないでおくととても気持ちがいい。
完成後、人肌くらいのトーンに整えた空間を「なんか不思議と落ち着くわ」と体感してくださったご夫婦。
今、ご夫婦の温かいお人柄でいろんな人がつながり生まれた場所。
ついた名前は「茶楽来 saraku」
これからさらに多くの人が出会い語り合う場所へと、そして「またここに戻って来たいな」と思っていただける空間に育つことを願っています。
2019年12月
vacation rental saraku
施工:伊藤嘉材木店
茶室設計:株式会社リンクス・ホリ
内外装デザイン監修:いろりデザイン室