Story

私のストーリー

私の仕事への想い、今に至るまでのストーリー。
日頃から一緒に仕事をしているインタビューライターの石原に話を聞いてもらいました。

「伝える」をデザインする

デザインに信念を持って

石原:梢さんがどんな気持ちで今、仕事に取り組まれているのか改めて聞いてみたいです。いろりデザイン室でえいこさんと一緒に仕事をするようになってどれくらいになりますか?

梢:そうですね・・・もう3年半になります。(取材時:2024年12月現在)意外と長くなりましたね。仕事、楽しいですよ!私たちが作ったデザインを通じて、クライアントさまの商品がいいものだというのが伝わると嬉しいです。

石原:確かに、デザインには中身のよさを伝えたり、広く届けたりする役割がありますよね。

梢:いいものがあって、それを必要としている人がまだその存在を知らないのなら、出会えるほうがハッピーだと思いませんか?いいものがあったら伝わったほうがいいんです。
デザインって伝わるための一手段だと思っていて、その伝わる瞬間が、「いいな」「幸せだな」って感じる時間になってほしい。だからデザインはきれいなものにしたいんです。見づらかったり、迷いやすかったり、情報がごちゃごちゃしていると、ストレスを感じてしまいます。それを避けたいんです。必要な要素だけにそぎ落として、一つひとつの要素に興味を持ってもらえるようなかたちにして伝えたいですね。

石原:梢さんのデザインはとてもシンプルで洗練された印象があるのは、そういう意図からだったのですね。

梢:伝えたい内容の密度を濃くしたいんです。純度120%、っていうくらい透明感を持たせたい。要らないことをそぎ落として、必要なものを全部入れたいんですよね。だから、デザインの要素は一つひとつ、いるかいらないか都度検討します。「いつも入れているから」という理由だけで入れるのはしたくなくて、必要ないものはすべて削除したいですね。

石原:実際にその思想をデザインに落とし込むときに、どんなことを大切にしているのですか?

梢:誰が、何を、どう伝えたいか、というのがあって、それを伝えるパーツが色やフォントや文章です。クライアントさまの雰囲気によって、このパーツはかなり変わってきます。そして手を動かして、このパーツがはまっていくところを探す感じですね。
私は文字が好きなので、フォントには結構こだわりますね。フォントを変えるとずいぶんと印象が変わります。えいこさんと意見を出しあって、いろいろ試して、ベストなものを探します。
文章の入れ方も、見る人の視線がどう動いていくかとか、試行錯誤して「これがいい!」と思うものが見つかるまで探します。

石原:梢さんと一緒にチラシやLPなどを作るとき、私がライティングした文章の内容に対する意見も的確で、いつも助けられています。この要素がない、とか、この部分はカットしてもいいか、とか。

梢:私きっと、「整える」のは得意なんだと思います。初めて読む人が私に乗り移った感じで、まっさらな気持ちで読むことができるんですよ。

石原:それはすばらしい能力ですね。 同時に、梢さんからは「伝えたい!」という熱量も感じます。

梢:私が紹介するなら・・・という視点が前提にありますね。まずお客さまの話を聞いて、お人柄や、やっていることを好きになると、「これを伝えたい!!」という想いが湧きあがってくるんです。逆に言うと、この熱量が私のなかで生まれないと、なかなかデザインに落とすのが難しいと感じます。

石原:なるほど。「何を伝えるか」をとても大切にされているんですね。

梢:そうですね、「誰に何を響かせたいか」はすごく考えています。例えば同じ業種でも、お客さまによって、誰に何を伝えるかは全く違ってきます。当たり前のことに文字数や写真を割かずに、きちんとそのお店や人の特徴的なところを目立つようにデザインをして、伝わる情報量を増やしたいんです。

石原:来てほしい人にひっかかるデザイン、ですね?

梢:そうです!お客さまの特徴的な良さを、文字でもビジュアルでも表現しつくしたいと思っています。

大手通信会社から小さなデザイン事務所へ

石原:もともと大手通信会社でシステムエンジニアとして働かれていた梢さん。デザイナーとはまたずいぶん違う仕事な気がしますが・・・。

梢:前の会社に入社するときは、「ITの力で面倒なことをなくして幸せな時間を増やしたい」と、携帯電話に携わる仕事を選びました。「人の幸せな時間が増えたらいい」と思って、いいものに出会えるためのデザインをしているのと、根本は変わっていません。
それにずっとデザインには興味があって、大学生のころは「夢は世界で活躍するWEBデザイナーになること」って言っていましたから。小学校では絵画コンクールに入賞していたし、高校は美術部の幽霊部員だったし(笑)、大学では専門に関係ない芸術学の授業も受けていました。

石原:でも、SEとして働いていたら、デザインに関する仕事をするチャンスはなさそうですね。

梢:それが、サービスの主幹をやっていたので、ホームページやチラシなどのデザインもどう作っていくか考えていましたし、全国の営業さんに渡す、サービスを伝えるための営業資料を自分で作っていました。メンバーの中ではダントツセンスがよかったので(笑)、チラシ職人みたいに作っていましたよ。

石原:では、今はもともとやりたかった仕事に携わっているということですね。

梢:そうですね。えいこさんのやっている仕事が面白そうだと思って、思い切って飛び込んだので。

石原:手帳が梢さんの人生を大きく変えたエピソードが大好きです。ご紹介いただけますか?

梢:東京で働いていた頃、何となく「最近うまくいかないな」と感じていて、「日本一の手帳を探してみよう」と銀座の伊東屋に行ったんです。それまでも手帳を使いこなせていたときは、うまくいっている気がして。そこで偶然、CITTA手帳のポップアップストアに出会いました。その場にいらした創始者である青木千草さんに教えてもらったCITTAのホームページでブログを書いていたひとりが、えいこさんだったんです。デザインをしたり、建築をしたりというえいこさんの働き方に興味を持ち、「えいこさんのセミナーを受ける」と手帳のやりたいことリストに書いたんですよ。
千草さんが行う朝の瞑想ヨガに参加するうちに、転職するのがよいという答えにたどり着いて、これからの道を模索するひとつとして、えいこさんのセミナーを受講したんです。

石原:それでつながりができたんですね。

梢:はい。講師と受講生という関係だったとき、えいこさんがSNSで「誰か仕事を手伝ってくれる人いないかな」と投稿したのを見かけたんです。具体的にどんなアシスタントをするのかも分からないまま、一緒に働いてみたいというメッセージを送り、今に至ります。

いろりデザイン室の一員として

石原:すごいタイミングですよね。その年、えいこさんは手帳に「パートナーが現われる」って書いていたんですってね。ご縁ですね! 実際に一緒に働くようになって、どんなことを感じましたか?

梢:えいこさんは軸がしっかりしていて、「NO」をきちんと言えるところがいいですね。私は、えいこさんが「やっていること」に憧れて来たので、彼女のことを崇拝したら終わりだと思っています。おかしいと思ったらNOを言えるような関係性でいないと。人に憧れすぎると、自分の「YES」が変わってしまうので、そうならないように気をつけています。

石原:なるほど。対等でいるからこそ、お互いが成長していけるのですね。

梢:えいこさんの人柄に影響を受けたところも、もちろんあって。例えば、いい意味で人の言うことを全然気にしないところ。からっと「いいもの作ろう!」っていう感じなんですよね。私はもともとすごく周りのこと気にするタイプだったのですが、同じこと言われても、捉え方が全く違ったのには驚きました。あれこれ解釈してストレスを抱え込むのってほんとムダだな、ってえいこさんのおかげで吹っ切れた感じがします。

石原:それはいい影響ですね。大手から、個人のデザイン事務所に来て、違いは感じますか?

梢:物事の判断のスピードがはやいから、進むのもはやいですね。機を逃さないというのはとても大切だと思うので、このスピード感はとても好きです。
あとは、大企業にいたとき、人が多いと個性が薄まってしまうのがもったいないと思っていたので、保守に走らず、個性的でいられるのが個人事務所のいいところですかね。

石原:2025年から、いろりデザイン室は企業の顧問デザイナーというサービスを始めましたね。そのことについて、どう考えていますか?

梢:相手が企業だと、影響を与えられる範囲が大きいので、たくさんの人にいい影響を与えられるように頑張りたいですね。たとえば今、社内でデザインを専門にやる人がいなくて、イヤイヤやっている人がいる、という状態だったら、私たちはやりたくてやっているし、ノウハウもあるから、任せてもらったほうが絶対にいいですよね。その社員さんは他の必要なことに集中できるので。

石原:どんな企業さまと組みたい、とかありますか?

梢:やりたいことが多くてエネルギーにあふれているような方々と一緒に仕事をしたいですね。私が「いいもの作ってるなぁ!」と感じ、伝えたいモチベーションが湧いてきて、先方も私たちのやることを面白がって、一緒に作っていってくれる方たちだと最高です!

石原:今後の抱負を聞かせてください。

梢:いろりデザイン室は、まだ伸び代があると思っています。でも、拡大しよう!と意気込むというより、目の前の人と目一杯楽しんでいたら、成長につながると信じています。こんなに素敵なブランドロゴを作れたらいいな、みたいな憧れのブランドはあるけれど、それに固執せず、どんな面白いことができるかな?どうやったら伝わるかな?と、どんどん新しいことにチャレンジしていきたいです。