
情景がないと、デザインはできません。
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こんにちは。
いろりデザイン室の武田えいこです。
「やっぱり“かたちにする”ってすごく大事だな」
と実感した最近の
デザインの現場について書いてみようと思います。
今週、
初めてのお客様と
打ち合わせがありました。
ご依頼内容は、
新商品パッケージのカラー提案。
初ヒアリングでは、
お互いにあまりバックグラウンドも
分からない状態で、
時間も限られていて──
正直、その段階では
まだ具体的な情景が浮かびませんでした。
私、もともと建築の世界から
この道に入ったのですが、
空間を設計するときに
必ずイメージしていたのが、
「人がそこにどう居るか」なんです。
朝の光がどう入って、
どこでコーヒーを飲むか。
玄関から入って最初に何が目に入るか。
そういう“動き”や“気配”を思い浮かべながら
空間を描くのが、ずっと好きでした。
実は、
グラフィックや
カラーデザインでも
まったく同じで、
その人が、どこで、どんな顔で
それを手に取り、使うのか──
私はいつも、
そんな場面を想像しながらデザインしています。
とはいえ、
経営者さんはお忙しいですし、
時間が限られた初回では、
その情景までたどりつけないこともあります。
「はて、どうしたものか」
今回は、
まずは「イメージに近そうな案」と
「全然違う方向性の案」──
2つのたたき台を
チャットでお送りしてみました。
すると、
それを社内で見てもらったことで、
「あ、こっちより、こっちの方がいい」
「例えば、こういうパターンも見てみたい」
といった反応が出てきたそうです。
さらに次の案を出すと、
「やっぱり前の方が良かった!」
と社内の意見がまとまり、
結果的にデザインの方向性が
しっかり見えてきました。
これ、やっぱり「言葉だけ」じゃなくて、
「見えるかたち」にしたからこそ
起きた反応なんですよね。
私も、
チャット越しに、
「あ、社長さんはこっちに向かいたいんだな」
「社員さんからはこういう温度感で返ってくるのか」
ということが、
目に見えるように分かりました。
こんなふうに
具体的な情景が浮かぶ瞬間。
私の中では、
まるで目の前にスクリーンが
パーっと開くんです。
そして、ぼやっとしていた景色が
「これだ」とピントが合った瞬間に、
やっとデザインが始まる。
実は私、
スケッチは得意ではないんですが、
(描けたらどれだけいいか…)
この「スクリーン」さえ開けば、
あとはその映像をパソコン上で
パズルのように組み合わせていくように、
自然と仕上がっていきます。
最初はぼんやりしていたものでも、
一度「かたち」にして、
誰かに見せてみることで、
言語化されてなかった気持ちや意見が、
ちゃんと動き出す。
そんな瞬間に、何度立ち会っても
「これがデザインの力だな」と思います。

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