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今日という1日のスタートボタンとリセットボタン

日曜日早朝、珍しく起きてすぐにメイクをする。
今からオンラインライブ配信をするためだ。
画面映えをするように、丁寧にファンデーションをのせ、発色のいい口紅をつける。
口紅を引いた瞬間、私の電源が入ってキュイーンと起動を始める。
鏡の中の自分に、久しぶりに電源を入れましたな、と言われた気がした。

そういえば、ここんところめっきりメイクをサボっていた。
マスクが日常的になって、常に顔の半分以上が隠れてるから。
保育園の送り迎えぐらいなら、眉毛さえ描けば十分。
めんどくさがりやの私にとってはある意味都合がいい。

最近、インテリアデザイナーである私は「我が家を世界一くつろげる場所にしよう」というテーマで、毎週日曜日にライブ配信を始めた。
コロナ渦で家時間が増えた今、住空間をもっと快適にしたいというご相談をたくさん受けるようになったからだ。そこで私が一番にお題に選んだ部屋は、寝室だった。

「今日は、くつろげる寝室の作り方についてお届けしたいと思います。
さて、寝室の雰囲気をガラリと変えるのにとっておきのアイテムがあります。
それはなんでしょう?」
私が画面の向こうに問いかける。

ふと思った。
寝室ってメイクみたいだなと。

リビングはゲストが来た時に見られたとしても、寝室は赤の他人に見られることはほぼない。
リビングはきれいに片付け、こだわりの家具を置いていたとしても、実は寝室は段ボールが積み上がって倉庫状態になっているというのはあるある。
人の目が届かないところはないがしろにされる、そんなもんじゃないだろうか。

だけど、あえて私はこう発信してみる。

「自分が朝起きて最初にみる景色、それが寝室です。
夜寝る前、今日という日を最後のしめくくりをするのも、寝室の景色なんです」

実際に、コロナで外出を自粛していた期間、私が家の中で一番大切にしたのが、寝室だった。
子供達が四六時中、家にいる。
マンションの下の人から苦情が来るくらいやかましい。
外に出られず体力の有り余った子供達は、寝てる時ですら大暴れ。
うっかり一緒のベッドで寝入ってしまうと、2人の脚や腕が右から左から、容赦無くブッ込まれる。
うーっとうめき声を上げて夜中目を覚ますことも日常茶飯事。
朝起きたらクタクタになってる。
とにかくもみくちゃにされた感が半端ない。
ただでさえストレスがたまるのに、夜まで休まらないようでは気が狂ってしまうじゃないか!

というわけで、自分一人の小さな寝室を作ったのだ。
子供達が寝静まってから、そーっと秘密の場所へ行くかのごとく隣の部屋へ移動する。
朝ピシッとベッドメイキングしたリネンのシーツに、ラベンダーのアロマスプレーをシュッと吹きかける。
それだけで、なんて優雅なの、私。
枕元にあるテーブルランプの温かい光だけ灯して、しばしぼーっとする。

「今日も一日、賑やかだったな」
さっきまでイライラしていたけれど、不思議なもので、その時ばかりは子供たちの可愛い顔だけが浮かぶのである。
1日の自分を労ってあげよう。
「明日もいい1日になりますように。朝までぐっすり眠って、全ての疲れがとれ、明日また生まれ変われますように」
そうおまじないを唱えて、ランプをそっと消す。
まるでリセットボタンを押すように。

そんな風に入眠するようになってから、朝スカーッと目が覚めるようになった。
まだうす暗い朝5時、天井からぶら下がったペンダントライトのスイッチをパチっと入れる。
シェードに包まれた陽だまりがぽっと優しい光が届けてくれる。
それを合図に「今日も1日はじまったぞー」と空間のエンジンが入り、私も起動を始める。

ちょうど1年前のことだ。
私は人間ドックである病気を告げられた。
幸い早期で見つかったから治るとはわかっていながら、その時は生きた心地がしなかった。
入院待ちの日々、毎晩小さな子供達の寝顔を見ては、
「私はもしかしたら、この子たちの大きくなった姿を見られないのかもしれない」
そんな縁起でもないことが頭をかすめたのだ。
今考えると全く大袈裟なんだけど。

無事に退院して完治したときに、私はこれからの人生、こう考えることにした。
夜眠る時に命が終わって、朝起きた時はまた新たに生まれ変わる、それぐらいの気持ちで毎日を生きようと。

だから、寝室は、他人には見えないけれども、自分自身を大切に扱う神聖な空間なのだ。

そして、寝室の雰囲気をガラリと変えるのにとっておきのアイテム…‥その答えは「照明」である。

女性にとって口紅が塗ったらオン、落としたらオフと切り替わるアイテムであるように、照明も今日という1日のスイッチなのだ。

だから、私は皆さんにこう提案したい。

「寝室の灯り、あなたが一番くつろげるお気に入りのものを選びませんか?」

そして、
「寝室を今日という素晴らしい一日をスタートするにふさわしい空間にしませんか?」と。

これを書き終えたら、もうすぐ今日という日が終わる。
今日も素敵な出会いがあり、いっぱい笑った。
たくさん歩いて身体はとっても疲れてるけれど、最高に満足して私は眠りにつくだろう。

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